Mob e.V. – Obdachlose machen mobil

路上での生活-ドイツのホームレス Obdachlosigkeit in Deutschland 2006

ドイツのホームレス事情
路上での生活-ドイツのホームレス  
彼らの存在は目立たない。少なくとも一見したところでは。しかし、目を凝らしてよく見ると、彼ら の姿はそこにある。駅の周辺や、歩行者ゾーンやショッピングセンター、それに教会や町の中心地や公園や公共の場に彼らはいる。服装は少しみすぼらしく、顔 は日に焼け、全体の姿は疲れきった感じである。中にはアルコールをたしなんだり、ドラッグをかいでいる者もいる。ホームレスと呼ばれる人達のことである。

彼らは時折物乞いをする。ごく控えめに「お恵みを」と書いた札を自分が座っている路上に置いているだけの者もいれば、道行く人に「1ユーロ硬貨持ってませ んか」と尋ねる者もいる。そこまでの勇気がない者は「何セントか持ってませんか」と尋ねる。中には、ドイツの都会によくあるタブロイド版の新聞を販売した りもする。

無宿者(Obdachlos)かホームレス(Wohnungslos)か:定義の違い

ビー レフェルトの町に拠点を置くホームレス支援連邦協議会によると路上生活者の数は2万人から3万人と見られている。しかし、その正確な数を知る者はいない。 時折正確な数が必要とされるのだが、だからといって誰が全ての通りや住居を虱潰しに回ってホームレスを捜すだろう。彼らは屋根裏部屋や地下室や大型のア パート、それに工事現場や公園や公共の場などで寝起きし、休閑農地や駅の構内や取り壊しになった家屋や廃墟や橋の下、それに大学のキャンパスなどに自分の 隠れ場所を探す。しかし、これも氷山の一角にすぎない。これよりはるかに多くの人が、緊急宿泊施設やホームレス収容施設や木賃宿や難民収容所といった保護 施設や友人や知人や親戚のもとで暮らしている。だが大抵は居候させてもらっているだけで、一時的なものにすぎない。

ドイツ都市連合会の定義では、ホームレス(Wohnungslos)は、賃貸契約で保証された住居を持たない者のことである。今現在、 自分の住む場所がなく、一時的に親戚や友人のもとで暮らしている人達、それに全く家がなく施設や緊急宿泊施設や難民収容所や女性収容所などに身を寄せてい る人達がこれに該当する。


 スライドショー : 路上での生活-ドイツのホームレス

データ、事実&基本的権利

ビーレフェルトにあるホームレス支援連邦協議会の推定では、ホームレス(Wohnungslos)の数は2004年の時点で、ドイツ全体で345,000人、内訳は男性が55%、女性が23%、青少年が22%と見られている。

2002年に実施されたハンブルクでの研究は、ホームレス状態に陥った人がここから抜け出せるチャンスは最初の6ヶ月しかないことを裏付 けている。これを一般化すると、ホームレス状態が長く続けば続くほど、この状態から抜け出すのが困難になるということである。これによって今後の生き様が 固定化されてしまうという訳である。

いくつかの支援団体が要求しているような住居に対する基本請求権は、ドイツ基本法にはない。このような基本的権利を導入しない重要な根 拠は、ホームレスの人々がドイツ連邦共和国を相手取って住居を準備するようにという訴えを起こそうと思い立ったりすることがあり得るからである。もしそう なったら、国は個々のケースに対応しきれないという訳である。従って、ドイツ基本法では、この様な権利を保証しないのである。

原因

ドイツは裕福な国である。平均的に見ればそうである。しかし、物事には必ず裏が ある。ドイツでは500万人を超える就労可能者が失業状態である(2006年2月現在)。ドイツ経済研究所の推定によると毎日1,000人分の職場が失わ れている。産業界では起業した会社も3件に1件の割合で倒産に陥っており、個人の家計でも債務状況は悪化している。またドイツの持ち家率はヨーロッパ平均 より低く30%前後で、ドイツ人の大半は賃貸住宅に住まざるをえない。こうして収入の約3分の1が住居費に消える。公共住宅の数はここ数年減少傾向にあ り、賃貸借法(宅建業法)の改正によって借主の権利が制限されることとなった。これとは無関係に住宅のニーズと個人が必要とする住居面積は継続的に増え続 けており、一人暮らしの世帯も増え、住居に対する要求水準も上がっている。セントラルヒーティング、バス・トイレ、温水器、電話、ケーブルテレビ、イン ターネット接続は、今では住居の標準装備になっている。

その上2005年に連邦政府が提出した貧困に関する報告書には、ここ数年間で社会的な格差と不平等さがより顕著になったことが記されている。

社会の背景にあるこういった事情に目を向けると、ホームレスの原因が自分の住む家を失くしたことにあるというよりは、むしろ生活が行き 詰ったことにあると言えよう。失業や人間関係の破綻、離婚、借金、依存症、精神障害、病気、家庭内の不和、家庭内暴力、経済的破綻といった様に個人的な問 題には留まらず、これがホームレスへの道標となるのである。

社会からの孤立や個人の行動パターンや行動の指針(不利な状況に追い込まれた際に問題を解決する能力が未発達という場合が多いのだが) といった目に見える道標が複雑に交錯しているのである。住居を失うことは、それまで続いてきた社会的・個人的貧困のプロセスの終着点なのである。

指針:ホームレスとのかかわり

個人および市民団体の支援活動
個 人の支援というのは、物乞いする者に小銭を与えたり、時には食べ物を与えたりする行為である。こういう市民は多いが、全員がそうする訳ではない。 そこで市民の有志が組織を作り、食料や衣類を集めて、必要とする人に配布したり、炊き出しを行なったり、特に冬場には緊急宿泊所やデイケアセンターなどを 準備したりするのである。こういった措置がホームレス状況そのものを変えることはまずないが、それでもホームレスの人達が生き延びるための役に立っている ことは確かである。

地方自治体の宿泊施設
地方自治体(州や国)による施設に収容しようという発想は、国家は国民の居場所をしっかりと把握しておきたい という考え方に端を発するものである。住所不定の国民は治安を脅かす要因で、長い間罰則の対象と考えられてきた。こういった理由に基づきドイツの各州は、 自ら届出を行った住所不定者に対して所轄官庁が宿泊施設を提供するよう法律で義務付けている。住所不定者用の宿泊施設は平均以下の居住環境で、町外れにあ ることが多く、通常は強制的な共同宿泊施設である。(何人もが一部屋で)共同生活を営み、住民には普通の借主に認められている権利もなく、多人数の施設に なっていることが多い。

こういった取り組み方針は、ここからまたホームレスを生み出す結果をもたらすだけである。確かに屋外で寝る必要はない。だが、ホームレスの多くは施設への収容を拒絶し、路上生活を続ける方がましだと考える。

社会保護法に基づく福祉団体を通じた国からの支援
申請を行なえば、社会保護法に基づき福祉団体を通して国からの支援が保証されてい る。申請は通常、ホームレスに支援措置を実施しようとしている施設が行なう。申請の際には、ホームレスは個人的な生活状況と問題点、それに過去に関する詳 細な記述が条件として義務付けられている。

根拠があるなしは別として、ホームレスの多くはこれを望まないし、他人には知られたくない自分の過去が露見することを嫌がり、こういっ た手続きでプライベートな部分に触れられるのだったら、路上生活を続ける方がましだと考える。これを逆に見ると、ホームレスにこれを受け入れるだけの覚悟 さえあれば、支援措置が受けられるということでもある。

社会保護法に基づく支援は、施設にホームレスを収容する方策と並行して、ホームレス状態を克服することに的を絞った実践的なカウンセリ ングやケアやサポートも行なっている。これによって多くのホームレスが家を借り、自分の家に入居して、ホームレス状態にひとまずピリオドを打つ。しかし、 実情を見ると、本当の問題が始まるのはここからである。労働市場への復帰、即ち職に就くのは極めて困難である。ドイツでは依然として失業率は高く、ホーム レスというのは大きなハンディキャップである。

家を借りても周りの環境に溶け込めないというケースが殆どである。これは、家を借りる際に回りの環境への配慮が殆どないことと、ドイツ の市町村や公共団体がホームレスに対する特別な配慮を行なっていないためである。住宅支援策ではまた、アフターケアが明らかに不十分である。こういった理 由で多くのホームレスがまた、支援施設に戻って来る。振り出しからやり直しである。こうしてホームレス状態が定着していくのである。

法律による排除と追放
こ こ数年間でホームレスを法律によって排除・追放しようという傾向が明確化してきている。ホームレスは、商店街やショッピングセンターや公共の場や駅、それ に観光スポットでは目障りな存在である。ホームレスは町のイメージを損ね、経済的利益の妨げになっている。ある時は間接的に、またある時はあからさまに ホームレスをこういった場所から遠ざける方策が考えられている。こうして生まれたのが、例えば公共の場でのアルコール摂取を禁止するという道路規則であ る。

公共の場の民営化は、民間の運営業者が館内規則として施設内にたむろすることや物乞いをすること、さらにはアルコールの摂取や寝泊りを 禁止する、という結果をもたらす。こういった方策が採られても、ホームレスはホームレスのままである。それでも、ホームレスの姿は段々と目につかなくなっ ている。それは、彼らが町のはずれに移動しているからである。しかし、こういった場所は既に大きな社会問題を抱えているという場合が多い。

個人レベルでも問題は多く、ホームレスが暴行を受けたり襲撃されたりする事件が後を絶たない。1989年から2005年までの間に143人のホームレスが命を落としている。

結論
本当の意味でのホームレスの社会復帰が成功したケースはごく一部である。支援策がもたらした大半の結果は、ホームレスはホーム レスのままで、彼らは公共の場で目立たない存在となり、飢えることもなく、排除されることもなく生き続けることができるというのが現状である。彼らの生活 条件は改善されたが、ホームレスという状況はそのままである。

今日、ドイツにはもっと別な問題がたくさんある。グローバル化、ヨーロッパ統合への動き、社会統計学的な社会の変遷、鳥インフルエン ザ、過激派テロへの恐怖、深刻化するエネルギー問題などはその一例にすぎない。ホームレス支援活動を行なっている団体も個人も、現在は守りの体制に入って いる。

これまで続いてきた支援策を取り巻く環境がこれ以上悪化しないよう、現状を維持するだけで精一杯である。

さらに、自分も貧困状態に陥ってしまうのでは、という恐怖感が今ではドイツの中産階級の間で広がっている。これが根拠のあるものかどうかは別として、こう いった恐怖心がもたらす結果には憂慮すべきものがある。ビーレフェルト大学の「多領域における紛争と暴力研究所」(IKG)は、ヴィルヘルム・ハイトマイ ヤー教授の下で「他人に対するグループ単位の敵対心」というテーマで10年間研究を続け、その中間結果を見るとホームレスを拒絶する傾向が今ではかなり広 がっており、この傾向はさらに強まる様相を呈している。

今では、町にホームレスがいるのは好ましくなく、物乞いをするホームレスは歩行者ゾーンから排除すべきで、ホームレスになった原因は彼ら自身にあると考える一般市民が増えつつある。

今まであった社会的コンセンサスが近い将来には成り立たなくなるかもしれないという不安材料である。ここでいうコンセンサスとは、社会的に排除された市民の存在を認め、社会生活に参加させようという合意である。

翻訳 : World Gate Corporation
シュ テファン・シュナイダーは、ベルリンにある自助支援団体「mob協会 - obdachlose machen mobil e.V.」の代表であり、ベルリンのストリート新聞「街路掃除夫 strassenfeger」の発行者で、ホームレス、自助支援と貧困をテーマにした著 書を多数執筆。博士論文のテーマは「ホームレス&主観の発達。自叙伝、ベルリンのあるホームレスの生活状況と見通し」。

著作権:ドイツ文化センター オンライン編集部

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2006年3月

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関連リンク
ホームレス支援連邦協議会  
連邦政府の貧困に関する報告書  
2002年のハンブルクの研究  
ビーレフェルト大学「多領域における紛争と暴力研究所」(IKG)  
シュテファン・シュナイダー  
mob協会 - obdachlose machen mobil e.V.  

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